版画芸術「銅版画25人」


生まれ育った自然豊かな環境や祖母との別れから「生々流転」という現象に興味を持ち、以後作品のテーマになりました。これまで少しずつ変化してきたモチーフとなるイメージは、創作の根幹となるテーマに沿って、身近な自然現象の中に見える驚きや発見から生まれました。このテーマを具現化するために主に腐蝕技法を使用しています。腐蝕によって起こる物質の変容はいつも不確定で、自然現象の変化のように想像を超えるイメージを生み出します。それは他の技法にはない魅力です。そのイメージをしっかり受けとめるために、何事にも囚われないこと、未知なるものを探索すること、そして弛まぬ研究を心がけています。《素描としての銅版画》シリーズは、腐蝕による変化を自分の中に受け入れながら近年制作しているものです。掲載したNo.28では、森の中で聞こえて来た音をメゾチントによって視覚化しました。私にとって銅版画制作は未踏の「生々流転」の世界を探す手段なのだと思っています。

版画芸術「銅版画25人」 2014年 第165号 P22-23に掲載