生涯ひた走る版画

版画作品コンクールの最高峰「台湾国際版画ビエンナーレ」で584作品の中から最高評価を得た。作品はFMラジオがいつも流れる自宅工房で3カ月かけて完成させた。「作業中は24時間工房にこもるのでラジオは貴重な世界の情報源」と笑う。趣味は「仕事」ときっぱり。「今36歳。人生の時間を無駄にせず最高の作品を追求したい」と情熱いっぱいに語る。

さがみ野に生まれ、幼少から外で遊ぶより室内でのプラモデル作りなどを好んだ。転機は中学2年の時。油絵を習う友人を見て自分も通うようになった。自由な発想を形にできる油絵に初めて触れ、「『これは面白い』と興奮したのを覚えています」と嬉しそうに振り返る。高校進学後も油絵教室に通い続け、その一方で人気アニメ「北斗の拳」に憧れて空手も習い始めた。美大進学を志したが、現役合格はならず浪人生活へ。「手を傷めると絵が描けなくなる」ため、空手は高校で引退した。

現在、版画家として活躍するがきっかけは受験の失敗だった。「志望した油絵科は不合格で、版画科だけ通ったんです」。最初は版画を好きになれなかったが、仲間や恩師の支えで、次第に版画に向き合うようになった。「版画では道具も自分で作ります。まさに一から手作業。これが最高に面白い」と今ではすっかり版画の虜だ。大学院2年で神奈川県美術展 美術奨学会賞を初受賞し、その後も各方面で評価を受けるなどその才能は次第に開花。大学院でも助手としてキャリアを積み、今では創作のかたわら生涯学習プログラムの講師も務める。

9月から文化庁在外研修員として1年間パリに渡る。「妻子を置いて留学しますから、しっかり成長して帰国します」。将来の夢は世界各地で個展を開くこと。「人生の最後の時が来るまで現役を貫き、作品を作り続けたい」と語る瞳にも生涯、一心不乱に版画の道を突き進む情熱が宿る。

2008年8月29日タウンニュース座間版「人物風土記」掲載