版画からみた芸術

版画は、技術と芸術という二面をもちます。日本では、中国から伝来した木版画が基調です。これは独自の文化として、浮世絵という芸術作品へ発展していきました。

ヨーロッパでは銅版画が盛んでした。木版画は、銅版画の普及に伴って早くに衰退します。銅版画は絵を描く人と銅版を彫る人、という分業制でした。銅版画の次には「リトグラフ」が隆盛します。リトは石、グラフは画法で現在、石はアルミに変わりましたが、かつては石灰石を使っていました。印刷面からみると版画は、このリトグラフの方法で発展し、オフセット印刷として今に至ります。

十九世紀末、版画は商品になる芸術として扱われはじめました。このような版画の下には鉛筆でサインとエディション(限定部数)が書いてあります。鉛筆で書くのは、鉛が退色しないのと、筆圧で筆跡が残るためです。刷り物である版画ですが、小切手のように、このサインによって価値が付くのです。

現在、芸術としての版画には二種類あります。自分で全行程に責任をもち制作する、オリジナル版画。そして、街中で有名日本画家の絵を版画にして売っているのをよく見かけますが、このような類のエスタンプ。エスタンプは、過去の分業制に近い形で、よくて本人が原画のみを描いている程度のものです。サインが本人がしていますが、その時は高価なものでも、後の財産にはなりません。

また、版画のみならず、芸術作品とは投資ではなく、個人の感性で購入するものです。作品との出会いは恋愛と一緒で、理屈ではありません。わからないから興味がある、面白そうだから見てみたい。芸術は難しい、という方が多いのですが、絵を見るときは考えないで、自信をもって好き嫌いで感じてください。きっと何かの発見があるはずです。芸術は楽しむもので、理解する前に感じてください。

すばらしい芸術作品に出合っても、先入観をもって考えてしまって、価値を見いだせないのは残念なことです。人には探す喜びがあります。どこかで自分の、オンリーワンを探してください。

このインタビューはロータリークラブで行われているミーティングにゲストとして招かれた際に講演した内容がロータリーの友、2008年Vol.56に掲載されたされたものです。