Workshop and Lecture

マチエールから作る銅版画

募集要項

■募集内容
札幌芸術の森版画工房で夏の特別ワークショップを開催します。今回は、「マチエールから作る銅版画」です。さまざまなマチエール作りを体験しながら3日間で作品制作を行います。

会期:8月1日(金)〜 3日(日)
時間:10:30〜16:00
受講料:12.000円(材料費込み)
対象:初心者〜経験者
定員:15名
主催:札幌芸術の森クラフト工房工芸・版画教室





ワークショップ詳細



転写した下絵を細いニードルで時間をかけて繊細に描画するという方法ではなく、腐蝕液を使ってダイナミックにマチエール(絵肌)を作り、そこから自由に発想していく作品作りに挑戦します。腐蝕液の力を使って間接的に生み出される予想外のマチエールからは、きっと新しいイメージが湧き上がることでしょう。彫ったり、削ったり、彫刻のように素材と格闘することで生まれてくる表現を体験していきます。

このワークショップはマチエール(絵肌)の作り方を紹介し、制作するということではなく、自分にとっての絵肌(マチエール)がどんなものなのかを各自が探り、発見していく手助けになれたらと考えています。腐蝕というブラックボックスを使っての制作は、自らの意思のみでは押さえ込めない、自然と人間の関係に似ています。 思い切ってこれまでの制作方法から一度離れてみる。また違う角度から近づいてみる。 腐蝕液は新しい自分の表現・イメージの構築を助けてくれることでしょう。 「思い通りに進まない不自由さを楽しむこと。最初のイメージに固執しないこと。」これが今回のテーマです。 腐蝕液が作り出す一期一会の造形を活かし版と格闘し潜在する自分自身の表現を探索する3日間となりました。


8月1日:1日目

□私の制作スタイルとデモンストレーション
私の制作方法と考え方の関係。腐蝕技法で作ることの出来るマチエールの紹介。

私の制作スタイルについて
・ 観察と発見の驚きから

作家の哲学と制作スタイルの関係
・ 下絵との曖昧な境界線について
・ 腐蝕銅版画について
・ 腐蝕の力とのバランス感覚
・ 完全にコントロールするということの先にあるもの
・ 自然と共にある制作リズム
・ 既製概念からの解放   

デモンストレーションによる腐蝕技法によるマチエールの制作の紹介
・ クレヨンを使った表現
・ 塩ビ版を使った表現
・ グランドに水を蒔く・塩を蒔く
・ 黒ニスによる描画
・ 松脂を使った表現 
・ 水溶性溶剤を溶剤を使った新しい表現
・ アクアチントによるさまざまな表現 にじみの表現等

道具と製版の関係
・ スクレーパー、バニッシャーの研ぎ方と使い方


□制作の実践
マチエールを自由に作って、削ったり腐蝕したりの繰り返しで制作を進めて行きます。その行程から生まれる試し刷りを見てイメージ出来る新しい自己表現を作品にして行きます。マチエールの制作には個々にアドバイスを行います。試し刷り素描を加えることでイメージを発展させ完成を目指します。   


講師の所感

銅版画というと細密画や挿絵を思い出す人が多い。これは大昔に作られた作品のイメージが、そのまま今でも刷り込まれているからだと思う。初めて腐蝕銅版画を習う場合も大方細い針のようなニードルでだれでもが一生懸命に描画をするという作業を経て、一枚の作品が出来上がる場合が多い。そんなことで銅版画ってこんなもんだと窮屈なイメージが固定される。

昨今の現代銅版画表現は多岐に渡り、これが銅版画の表現かという作品もある。自身が制作する場合、綿密な下絵を転写して版をつくることはまずない。大方のイメージはあるが、あとは腐蝕液との共同作業でもある。腐蝕液は思わぬ効果を生み出して作者の意図を広げてくれる。今回はそんな腐蝕によって偶然出来るマチエールから作品を紡ぎ出す制作の方向性を受講生に体験して頂いた。

受講生の方々は余りに多くの手法をデモンストレーションで見たため少し混乱したようだったが、それぞれの好きな手法が見つかったようで、何回も気に入るまでテクスチャの練習をして、そこからイメージを膨らませたようだった。

なんども繰り返し作ったマチエールから削りだして表現を作る作業は、初めて体験する方も多く、彼らにとってとても難しい課題だっただろう。それは格闘しながら完成に近づく楽しみを知り得たと同時に、産みの苦しみも同時に体験したことで、これまでの制作を振り返る機会になったと思う。

一つ方向性を決めて進んでいく制作の方法も、このような自由な航海を楽しむ方法も同じ銅版画の表現だ。あまり固く考えないで、この講座が表現の幅を広げ個性を十分に発揮出来る表現方法を見つける切っ掛けになれば嬉しい。