Workshop

つくってみよう でこぼこ絵

募集要項



まず銅板に絵を描くんだ。紙を貼ったっていいんだよ。
その銅板を腐食(化学変化)させて、インクをのせて、さあ刷ってみよう。
するとどうだろう-どんな世界が見える?
それが版画でつくった、きみのもうひとつの世界だよ。

□多摩美術大学生涯学習講座あそびじゅつ(子供講座)「つくってみようでこぼこ絵」
開講日時:2008年3月26日(水)10 : 00 - 15 : 00 場所:多摩美術大学上野毛キャンパス
対象:小学1 - 6年生
定員:各15名
受講料:3000円(材料費別途1000円)
講師:大矢雅章
アシスタント:伊藤あずさ、細田恭子



講座内容



この講座は「なんで?どうして?」という子供の好奇心から、こんなものが出来てしまったという驚きを引き出します。理科と図画工作を足した要素を持っています。私は子供の時、なぜなぜ君でした。しかし残念なことに多くの大人は私の関心の答えを教えてくれなかったのです。大人になっても「なんで?どうして?」という、根源的なことにいつも興味があります。
この講座は子供の時の私におくるメッセージなのかもしれません。

まず銅という素材の話です。金属の原石や加工されたものを実際にみせて素材についての理解を深めます。
作業は普段使い慣れているマジックやシールを使って銅版画を作ります。銅板にマジックペン(またはシールを貼ること)で描画し、腐蝕液に浸けるだけで制作出来る簡単な行程を通じて、固いと思っている金属が腐蝕液という薬品で簡単に変化していく様子を見ることで、驚きと発見を子供達に体験してもらえたらと思います。

また制作した版を刷ることで反転したイメージが紙の上に刷りあがる楽しさを知ってもらえたらと思います。最終的に銅版を塩と酢の飽和溶液で洗うことで銅版の色がバラ色になる過程を体験してもらいます。
刷った版画はみんなで洗濯物のように吊してみんなの世界を眺めます。

講座詳細



■持ち物
汚れても良い格好で来てください。
エプロン・子供用軍手

■講座必要用具
銅板:10cm×10cm以下の異なる大きさの銅板6枚
紙:いずみ中判4分の1 一人3枚 (中判25枚)
銅版画カラーインク
寒冷紗
人絹
紙べら
カッティングシート 一人あたり22cm角
はさみ
マジック(ZEBRA油性マッキー極細)
腐蝕液:塩化第二鉄
※腐蝕液、消耗品等は工房にあるものを使用する


■講座行程
□午前中行程
・8:30-10:00 集合し行程の説明と準備を行う。
・10:00-10:15 講座の簡単な説明と十円玉を使って銅がどんなものなのかを話します。 その際に実際の鉱物を見せて鉱物からこの銅が出来ているという簡単な話をします。

1.銅って知ってる?
2.銅はこんなものになっているよ。
3.銅はこんなものから出来ているよ。
4.銅はどこで採れるの?

・10:15-10:30 実際にお手本としてシールを切る、マジックで描く実演をする。失敗しやすい注意点を具体的に話しをする。

・10:30-11:30 作業 描き終わったら腐蝕液に順次腐蝕液に入れていく。
・11:30-12:30 子供達の昼食時間中にスタッフが腐蝕液に浸ける。腐蝕液の中の版は揺らすことで腐蝕の進行が進むためスタッフが交代でその作業を行う。スタッフは交代で食事をする。腐蝕液危険防止のため雨天で無い限り教室外に出して行う。

□午後行程
・12:30-12:40 腐蝕液から出して見せる。変化した様子を見てもらう。
・12:40-14:30 空刷り・色刷りを行う。(2枚から3枚)
・14:30-15:00 廊下に吊した版画をみんなで見て、先生からの話をする。

講師の所感

このワークショップは昨年開催した「描いて作る銅版画の不思議」をバージョンアップさせて、パズルの要素を付け加えたワークショップとして企画開催した。この一連のワークショップシリーズは、銅という素材の変化を体験することで参加者に形あるものの変容や、物事の変化に目を向ける切掛けになって貰いたいと位置づけているシリーズである。ワークショップの目的や詳細は前回2007年「描いて作る銅版画の不思議」の報告書を参考にして欲しい。

前回の経験をベースに参加者がさらに楽しめる要素を付け加えることにした。子供は小さなものをパズルのようにして遊ぶのがとても好きであることから、一枚の大きな銅版を使うのでなく、形の異なった小さな版を6コ用意してパズルのように組み合わせて自由な絵を作れるように配慮した。これは大きな版に描くと絵の上手下手が分かり易いが小さなものだとこれが分かり難いという要素もある。このワークショップは絵を作るということが目的ではないので、その辺りに焦点が定まらないようにしたいというねらいもある。

しかし反省点の一つとして今回はこの版を6コ使うという事がスタッフに大きな負担を強いることになってしまったようだ。まず、バラバラ3詭にした版は子供達が持って遊べるようにしたために、銅板の角が他参加者に怪我をさせる恐れが懸念されることになった。そこでその点は、大きめの段ボールに版を固定することで安全面をクリアしたのだが、バラバラに描いた版を、その都度腐蝕液に入れて処理することは数が多いだけにスタッフの負担が大きかったようだ。また低学年の子供達の中で、版が見つからなくなったりしたことで、不安になったりした参加者もいたり、喜ばせようとした配慮が逆に裏目に出た事も多々あったことがあげられる。またこういったスタッフが作業に掛かりきりになるロスタイムの間に子供達を退屈にさせないための工夫が必要になった。今回は子供達から質問を受けたが、これも年齢差があるために全員に理解出来ないものがあり難しさを痛感した。中でも腐蝕液に関しての質問は理解の範疇を超えるものが出るなど、子供の興味に改めて驚かされた。

この講座では腐蝕液を通じて版の形状が変化することを見せるということが、企画目的の一つではあるが、今回はエンボスを作り触る体験をするという目的があるため、刷りの工程も重要な要素である。以外に空押しによるエンボスは版の腐蝕が浅かったために驚きは少なかったようだ。インクを使った刷りはローラを使って、凸版画としてデコボコ絵を作ろうと思ったが、ローラを上手く凸面に乗せることが出来なくて凹版の部分にも絵の具がついてしまってぐちゃぐちゃになってしまったものが多かったようだ。これは版数が増えたためにスタッフが対応しきれない問題がでたようだ。しかしパズルのように絵を組み合わせて刷ることが出来たことは、刷りよって見ることが出来る楽しみをまた増やしたように思える。もともとエンボスを見せるということが企画当初の目的の一つだったが、やはりカラフルに色が付いている方が、子供には魅力的に見えるようで、インクをつけてローラを転がす工程がまた楽しかったように見えた。刷りに関して大人が上手くできていないと思うほど子供感じてはいないだろう。それよりは自由にローラーを動かせない不自由さを嫌うに違いない。

大人な予想する面白さと子供が見つける喜びは、意外な段差があり、その段差を見ることが出来るのはこういった企画を考えて実践する大人の発見だろう。ワークショップは何かを修得する為の講座と異なり、「参加者が専門家の助言を得ながら問題解決のために行う研究集会」であるが、専門家は参加者の反応や発言から刺激を受けることができる相互の問題解決の場であることが僕としては望ましい。そういった面から考えると、今回のワークショップは企画する僕に様々な不安定要素を見せてくれて場を創り出す難しさを新たに教えてくれたように思う。ワークショップでの講師の立場は、統括指導する先生としての役割ではなく、サッカーでいう選手のキャプテン(司令塔)のようなものだと僕自身は感じていて、その場に一緒に参加して、ちょっと飛行高度の高い所から、個々の参加者がその能力を充分に引き出せるように流れをコントロールする役割を担っていると思っている。

そう考えた場合、今回は参加が15人、講師、アシスタント合わせて3名だが、危険物を使う場合はもう少し参加者が少ない方が望ましいのではないかと感じた。内容的な問題として、本来子供に体験して貰いたいと考えていた今回の内容は実は大人で丁度良い内容だったと感じている。子供講座として考えた場合、今回の企画もう少し、内容を整理し工程を簡略化する必要があると実感した。

以上