ひとりの静かな時間が好きな私にとって夜のしじまに腐蝕液という不思議なブラックボックスを覗きこむひとときはなんとも楽しい時間となっている。

この第三者に制作をゆだねるエッチングという摩訶不思議な手法は何事にも曖昧を好む私には丁度良いものとなって久しくなる。 「霏霏」(ひひ)の語源は雨や雪が深々と降り続くさまというものだが、私は生命が永い間、昏々と静かな命の火を絶やさずに生きている様子をこの言葉に重ね見ている。

子供の頃から植物に囲まれた静寂な環境が、自然と私にこのようなことを思考の源にさせるのかもしれないが、これからもこの言葉なき静かな命は、私の心に限りないイメージの世界を作り出す鍵になってゆくだろうと感じている。

大矢雅章 1997

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